熱傷の基本のキ:医学部時代~研修医の復習【勉強】

2019/04/01

 



✅あくまでPrimary Surveyが優先

形成外科/皮膚科的な熱傷の深達度や面積の評価は後。
先に気道熱傷や胸部コンパートメントによる換気障害や循環障害を救急メインで診ていただく。
細かいところはABLSマニュアルを参照


✅熱傷の分類について

大きく分けると表皮までのⅠ度、真皮までのⅡ度、皮下組織以降のⅢ度。
この真皮までのⅡ度の中に浅達性Ⅱ度:SDBと深達性Ⅱ度:DDBを置き、4段階で評価することが多い。




熱傷の深度は概ね温度と接触時間によって決まり…

低温やけどと言われるようなそこまで高温でない物質との接触による受傷であっても長時間接触があればⅢ度熱傷にもなりうる。

✅面積の評価:9の法則と5の法則,手掌法

熱傷の受傷面積を推定する最も一般的な方法が9の法則
①みぎ上肢
②ひだり上肢
③みぎ下肢前面
④ひだり下肢前面
⑤みぎ下肢後面
⑥ひだり下肢後面
⑦体幹前面1
⑧体幹前面2
⑨体幹後面1
⑩体幹後面2
⑪頭部
をそれぞれ9%とし、9×11=99%に陰部1%を加えて100%とするもの。

逆に面積がそう大きくない場合は手掌法
『患者の手掌の大きさを全体の1%とする』を用いて評価することができる。

小児の熱傷については頭部が占める割合が大きく9の法則が当てはまらないので5の法則を用いるが、これは幼児、小児、成人でそれぞれ数値が異なる。(国家試験で勉強するのは頭部が15%の小児版5の法則。)ぶっちゃけこれを覚える意味はないと思うけど…

さらに細かく分類するには、Lund &Browderの法則を用いる。
これは年齢によって変化する部位と変化しない部位にわけて評価を行う。これも覚えるのは無理。

✅BURN INDEXとPrognostic Burn Index、Artsの診断基準、

ABLSマニュアルでは(生命の)予後推定因子として

GradeB
→熱傷面積(B#)、年齢(B)気道熱傷の有無(B)Ⅲ度熱傷面積(B)Burn Index(B)自殺企図による受傷(B)Revised Trauma Score(B)

GradeC(予後を推定する指数として考慮してもよい)
熱傷予後指数(PBI)

が挙げられている。

・Burn Index[BI]

Ⅲ度熱傷面積(%) + Ⅱ度熱傷面積(%)×1/2 > 10~15%
で重症として扱う。

・Prognostic Burn Index[PBI]


prognosticの和訳が『予知する』なので、Burn Index[BI]を元に、年齢による予後を考慮するもの。
Ⅲ度熱傷面積(%) + Ⅱ度熱傷面積(%)×1/2 + 年齢> 100
で予後不良(死亡率50%以上)として扱う。
70未満では概ね生存が見込まれる。
一応BIの発展型ということだが、良質な研究がないためガイドライン上では推奨度がBIに劣る。

・Revised Trauma Score


4点
→GCS:13~15、89<SBP、10≦RR≦29
3点
→GCS:9~12、76≦SBP≦89、29<RR
2点
→GCS:8~6、50≦SBP≦75、6≦RR≦9
1点
→GCS:4~5、1≦SBP≦49、1≦RR≦5
0点
→GCS:3、SBP<0、RR<0


上記のように意識レベル(GCS)収縮期血圧(SBP)呼吸数(RR)をそれぞれ0~4点で評価し、下記式によって算出されるスコア
主に救急領域、外傷などで用いられる。
RTS=0.9368✕GCS + 0.7326✕SBP + 0.2908✕RR
こちらはスコアが高いほど予後良好。

・Arzの診断基準


①重症熱傷
→熱傷センターで入院加療を要する
Ⅱ度熱傷:体表面積30%以上
Ⅲ度熱傷:体表面積10%以上
顔面,手,足,会陰部熱傷
気道熱傷
軟部組織の著しい損傷や骨折を伴う熱傷
電撃傷
深い酸損傷

②中等症熱傷
→病院での入院加療を要する
Ⅱ度熱傷:体表面積15~30%まで
Ⅲ度熱傷:体表面積10%以下かつ顔面 手 足 会陰を含まないもの

③軽症熱傷
→外来で治療可能
Ⅱ度熱傷で体表面積15%未満
Ⅲ度熱傷で体表面積2%未満

治療の場を決定するためのスコアリング。

すごく極端な話をすれば、Ⅱ度熱傷で片腕全部熱傷みたいな患者は軽症なので外来での治療が可能。開業医は絶対嫌がって送ってくるだろうけど。

起動熱傷については別投稿でまとめるつもりだけど、基本的に挿管や全身管理が必要な熱傷は一般病院の皮膚科や形成外科では手に負えない。人工呼吸器管理を含めた集学的治療が必要なので熱傷センターでの加療が原則必要。

✅簡単な初期輸液対応


Arzの診断基準②の中等度熱傷 以上では、基本的に受傷部からの浸出液などによる影響が無視できない。
即入院管理が必要な症例ではほぼ輸液が必要と同義であると考えていい。ガイドライン上も

経験的に15%TBSA以上,小児では10%TBSA以上で輸液療法が必要とされていた

とされており、現在もこれを覆すエビデンスはないようなので、上記満たす症例では速やかに輸液を開始すべきであり

初期輸液には,ほぼ等張の電解質輸液(乳酸リンゲル液など)を使用するのが標準的であり推奨(Grade B#)
である。輸液の量およびスピードに関しては
『適切な初期輸液の量(速度)およびその指標について,現在のところ結論は得られていない』
とはされているものの、一般的には下記のParkland法(Baxter法)に従い行われることが多い。

成人では,乳酸リンゲル液(RL)などにより受傷後 24 時間で概ね4 ml/kg/% burn を目安とし,最初の8時間にその 1/2 量,次の 16 時間に残りの 1/2 量を投与する(Grade:C#)
例として、体重65kgの成人が、①みぎ上肢+⑦体幹前面1の2度熱傷を受傷した場合、熱傷面積は18%
4 ✕ 65 ✕ 18 =4680 mL となり、24時間で500mLラクテック9本ちょい入れるというかなりの大量輸液になることがわかる。


この推定式は、覚えなくともMSDマニュアルに計算ページがある


✅関連投稿


今回はこのへんで。続きの投稿は下にリンク貼っておきます。

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