局所陰圧閉鎖療法(Negative Pressure Wound Therapy:NPWT)【勉強】

2019/04/08

 


 

✅局所陰圧閉鎖療法(Negative Pressure Wound Therapy:NPWT)について


 局所陰圧閉鎖療法(Negative Pressure Wound Therapy:NPWT)は1997年に米国で始めて報告され、日本で保険適応されたのは2009年。いわゆるV.A.C療法ですね。

開放創を密閉し、その内部に陰圧をかけることで難治性の創傷に対して治癒を促進できる。

保険適応

・外傷性裂開創で、1次閉鎖が不可能なもの
・外科手術後の開放創または解放創
・四肢切断断端開放創
・デブリードマン後皮膚欠損創

適応期間

・開始日から3週間。
・特に必要な場合4週間を限度として算定。

禁忌

・悪性腫瘍を合併した創傷
・臓器および大血管との交通がある創傷
・壊死組織が除去されていない創傷
※感染を伴う創に関しては文献によっては禁忌…?
…など


✅傷が治るためにはどういった状況が必要なのか


 ベースラインとして
・感染のコントロールがついていること
・創部への血流が保たれていること
・身体の栄養状態が良好であること
・適切な保護がされていること
…などは一般的に知られている事実であり、これは前提。

これを踏まえた上で比較的浅い創傷を適切に保護し、治癒に結びつける手段については
未来投稿:【勉強】創部処置で使う被覆材について【美容/皮膚/形成外科】

で勉強した内容を書く予定。


✅どうして陰圧をかけることで創傷治癒が促されるのか


 裏を返せば、創傷被膜剤や塗布剤のみでの自然治癒が期待できる浅い創傷に対して
浅くない創傷では浅い創傷にと比較して何が問題になるのか。
・創の範囲が広い/深さが深い
・多量の浸出液/浮腫
・血流不良
・(ベースの)栄養不良
・不良肉芽組織/壊死組織
・感染を合併しやすい
こんな感じ。

NPWTでは
・湿潤療法(Moist Wound Healing)による効果
・吸引による創部の収縮効果
・創部および浸出液内に含まれる各種サイトカインの影響
・組織の機械的圧力に対する反応

などが関与しているとされる。

つまりNPWT下では
・創の範囲が広い/深さが深い
・多量の浸出液/浮腫
・血流不良

このあたりを改善していることになる
当然創部の状況によりこの因子が複数相互に関係し、要素要素の重要度も変化する。

✅創傷治癒


 未来投稿:【勉強】創部処置で使う被覆材について【美容/皮膚/形成外科】
でも少し書く予定だが、創傷治癒は
①炎症期
②増殖期
③再構築期
の段階を踏んで進行する。

炎症期~に浸潤してくる好中球,マクロファージ,T 細胞などの免疫細胞は細菌や異物の除去といった局所免疫作用や炎症作用のほか,サイトカインや細胞成長因子を放出することで重要な役割を担っている

好中球は tumor necrosis factor(TNF)-αや interleukin(IL)-1 とサイトカインを産生・放出
→線維芽細胞や表皮細胞を活性化させる

マクロファージはplatelet-derived growth factor(PDGF), transforminggrowth factor (TGF)β, basic fibroblast growth factor(bFGF)など様々な細胞成長因子/サイトカインを産生・放出
→繊維芽細胞からの細胞外基質の合成を刺激したり、血管新生や肉芽組織の形成を促進したり、表皮細胞による再上皮化を誘導している。

このサイトカイン/成長因子は受傷後しばらくをピークにして低下するが、NPWTによる陰圧環境/機械的な刺激がこのサイトカイン/成長因子の量を低下させず、創傷治癒に関与するとされている。


✅吸引圧の設定について


 『陰圧をかける』と一言で言ってもどの程度かけるかは非常に重要。
かけすぎは過陰圧で逆に創傷治癒を遅らせることにつながりかねない
陰圧負荷による血流増加が-125mmHgで最大化したとの報告もあり、-125mmHgを上限に開始する例が多いが

適応部位/重要臓器が近くにあるかどうか
小児/成人
患者が痛がるかどうか などで適宜増減する必要がある

報告や実臨床の場では-75~-100mmHgで施行しているケースが多いような気がする。
(この辺は教科書や雑誌、論文でもバラツキがある…-50mmHgでも大丈夫、陰圧が小さいほど良いみたいな論調の報告もあったのでこのあたりどういったスタンスを取るべきなのかもう少し勉強したいところ)

追記:2020年の形成外科学会総会でもこのあたりについての一般演題がありましたね。
興味深く拝聴しましたが結局目的次第って印象でした。吸引のみなのか組織固定まで目的に含むのか、そのあたりで使い分けるのがよさそうですね。


✅まとめ


 NPWT療法についての単独ガイドラインは現在なく、褥瘡ガイドライン内の記載など、各論的な疾患とその部位それぞれに対して適切な圧力の調整が必要。

ガイドラインに近い物としては
Negative-pressure wound therapy with instillation: international consensus guidelines.など…

また、洗浄機能を持つNPWTの機械なども出てきているが、文献としての情報が不足気味で検索/勉強した範囲では見解の統一が成されていなかった。

手術創に対する感染予防としてのNPWTは賛否分かれている模様
Costa ML, et al. Effect of Incisional Negative Pressure Wound Therapy vs Standard Wound Dressing on Deep Surgical Site Infection After Surgery for Lower Limb Fractures Associated With Major Trauma: The WHIST Randomized Clinical Trial. JAMA. 2020 Feb 11;323(6):519-526.

GW中遊んでばかりともいかないし勉強をしてみたけど
マイナー領域は内科領域と異なり情報が得にくい面がありますね。教科書もそう多いわけでもないし、雑誌や論文を読んでみてもいかんせん母数が少ない。
何よりガイドラインがないものへの勉強がこんなに難儀とは思わなかった。どの情報を取るかが非常に難しい。

もう少し時間をかけて勉強をしてみよう

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