産業睡眠医学・睡眠と眠気の主観的・客観的評価
✅睡眠と生体リズム
・生体リズムの関与
人はどうして眠るのか
→身体にはリズムがあるから
1.サーカディアンリズム(概日リズム)
約1日(24時間)を周期としたリズム
→睡眠(全体)、ホルモン分泌
2.インフラリアンリズム
24時間以上のリズム
→生理周期など
3.ウルトラディアンリズム
24時間以下のリズム
→睡眠の中での変化など
体内のサーカディアンリズムを司る時計遺伝子、
その中枢である視交叉上核(主時計遺伝子)は光の影響を受ける
→光刺激の13~15時間後に睡眠を誘導するメラトニンを分泌することで睡眠を促す
※夜間に強い光刺激を受けるとメラトニン分泌は抑制される
また、ヒトのサーカディアンリズムは24時間よりやや長いので、放っておくと少しずつ後ろにずれる(概日リズム障害)ので毎朝日光を浴びることが重要になる。
→逆にこのサーカディアンリズムが後ろにズレやすいことを利用して
3交代勤務のシフトでは少しずつ後ろにずらすように組むと生理学的に適したものになっている
・その他の要素
深部体温の関与
→深部体温が下がるタイミングでにゅうみんしたい。
カフェイン
→強力な覚醒作用。半減期4時間なので夕方以降は避けるべき
昼寝(1時間~)
→睡眠の深度を下げる
ブルーライト
→メラトニン分泌を妨げる
疾患
→睡眠時無呼吸症候群など
✅睡眠において
日本はOECD各国でも韓国に次いで睡眠時間が短い国(2006)であり、1/3程度で少なくとも1つ以上の睡眠についての問題を抱えている
睡眠障害によって…
短期的影響
→ヒューマンエラー、生産性の低下
・眠気
・疲労感
・覚醒度の低下
長期的影響
→健康寿命への影響
・肥満
・高血圧
・糖尿病
・脳血管障害
・精神疾患
・認知症
経済的損失(医療費を含まず)でも数兆円の経済損失があると試算されており、
また世界各国で睡眠障害と関連する事故(日本国内だと高速バスの事故が有名)が生じている。
✅睡眠時間
-睡眠の量-
統計的には7時間が最も死亡率が低い。
ショートスリーパー(6時間未満の睡眠でも集中力その他に問題が生じない)
→Dec2遺伝子の変異が関連すると言われており、後天的な訓練などにより睡眠時間の短縮とパフォーマンス維持の両立はできないとされている。
ただし、加齢に従い必要な睡眠は減少する(それでも高齢者で6時間~)
また、6時間未満では心血管疾患などの発症リスクが上昇することは広く知られるようになってきている。
・14 hours in bed study
元々7時間半程度睡眠が必要な人を14時間ベッドに寝かせると
最初はほとんどの期間寝ていられる。そして3週間程度で8時間半程度で定常状態になる
→もともと睡眠量が足りていない!3週間程度で(長期的な)睡眠不足は解消される。
✓日中強い眠気がある
✓休日、普段より2時間以上眠る時間が長い
などの症状は不普段の睡眠不足を示唆する。
-睡眠の質-
人間の睡眠は
レム睡眠とノンレム睡眠(1~3)を交互に繰り返すようになっている。
覚醒時の脳はは細かく、早いが…
入眠から90分程度深い眠りになるとSlow Wave(徐波睡眠)状態となる(ノンレム睡眠)
このタイミングで成長ホルモンが分泌され、これが老化防止その他に係わるため、最初の90分で深い眠りを確保することがまず大事になる(黄金の90分)
✅睡眠の主観的・客観的評価法
主観的評価
・ピッツバーグ睡眠調査票(PSQI)
Web:https://www.sleepmed.jp/q/meq/psqi_form.php
アンケート方式で『過去1ヶ月の』主観的な睡眠の質を判定する。
睡眠の質、入眠時間、睡眠時間、睡眠効率、睡眠困難、眠剤使用、日中覚醒からなり、6/21点をカットオフとして睡眠に何らかの障害があるかどうか判断したり
各項目毎に評価ができたりする(日中覚醒と睡眠効率が心疾患と関連)
ちなワタシの。すやすやでワロタ。
・3次元型睡眠尺度(3DSS)
Web(大塚製薬):https://www.otsuka.co.jp/suimin/awake/
PSQIと比較して回答がシンプルで素早く行うことができる。
リズム(位相)、質、量の3項目で評価が得られ、各項目に対してのアドバイス(ソリューション)が提供される。
ちなワタシの。これまたすやすやでワロタ。
・睡眠日誌
毎日自記式で
就寝、起床、食事、眠気、中途覚醒なども含めて記録をつけてもらう。
睡眠以外の要素を拾うことができる。
客観的評価
・活動量計(アクチグラフ)
スマートウォッチみたいなもの。
装着しているだけで測定できるのがメリット
脈拍など測定項目には限りがある
・睡眠ポリグラフ検査(PSG)
脳波、筋電図、眼球運動、血中酸素飽和度Etc…を測定。そうそうできない。
睡眠の質を客観的に評価できたり、睡眠時無呼吸や不整脈、睡眠時てんかんなど疾病までしっかり拾うことができる。
✅眠気の主観的・客観的評価法
眠気(睡眠欲求):蓄積した披露を解消しようとする恒常性の圧力
覚醒信号:脳や身体の賦活力
内的要因(サーカディアンリズム他)、外的要因(明るさ、身体負荷)このせめぎあいで覚醒度が変化する
主観的評価
・スタンフォード眠気尺度(SSS)
その時点における自分の眠気を7段階で回答してもらうもの
・エプワース眠気尺度(ESS)
Web:https://www.msdmanuals.cn/medical-calculators/EpworthSleepScale-ja.htm
行動時毎にどの程度の眠気がするのか4段階で評価を行うもの。
睡眠障害、ナルコレプシーや特発性の過眠症などとの相関性が高く使いやすい。
・カロリンスカ眠気尺度(KSS)
その時点における自分の眠気を9段階で回答してもらうもの。
スタンフォードと似ているが、PVT(後述)とよく相関する
→客観的な尺度に親しい信頼性
・VAS
10cmの線のなかでどのくらい眠いかを線引してもらう。
客観的評価
・反復睡眠潜時検査(MSLT)
2時間毎に20分の睡眠を行い、睡眠に至るまでの時間を計測する。
通常は10分以上かかるが…過眠症やナルコレプシーでは5分以内になるなど非常に短くなる
・覚醒維持検査(MWT)
・OSLER検査
光刺激を提示してからの反応時間(ボタンを押す)反応時間と反応の有無を計測する。
7回連続で押せなくなった場合に入眠とみなす覚醒度の検査
・精神運動機能検査(PVT)
眠気の度合いを聞いた後
OSLERと類似、デバイスに数字を提示してからの反応時間(ボタンを押す)反応時間を計測する。5分間ランダム表示する。
Major Lapse(3Sec<)
Major Lapse(500mSec<)
睡眠を長く取ることでPVTの時間は短くなり、相関してスポーツのスコアが改善した研究などがある。
参考(Webで体験):http://www.sleepdisordersflorida.com/pvt1.html
・フリッカー検査
専用器具で光の点滅をどこまで判別できるかの検査。
正常覚醒度では40~50Hz程度からちらつきを把握できる。
✅産業医的な観点:健康経営
国、企業も取り組み開始
→健康経営優良法人認定制度
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeiei_yuryouhouzin.html
健康経営の評価指標:プレゼンティーイズム
定義:Presentieeism
『出勤しているにも拘らず、心身の健康上の問題により十分にパフォーマンスが上がらない状態』
定義:Absenteeism
『欠勤や休職、あるいは遅刻早退など、職場にいることができず、業務に就けない状態』
以前はこのアブセンティーイズムのみで評価が行われていたが
現在ではプレゼンティーイズムの観点から社員のパフォーマンス向上に取り組まれるように。
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